小林信也
2013年06月29日
★江戸の都市プランナー
新聞書評を見て借りました。
江戸末期、町民ながら、名主として近隣を束ねて苗字を名乗る事を許された熊井理左衛門の足跡をたどった歴史書。
歴史書ではありますが、資料を丹念にあたり、ギリギリここまではOKだろうという推測による小説仕立ての描き方をされているために、よくある歴史的事実の羅列によって、内容的に正確なんだろうなぁと思いつつも、その味気なさに放り出したくなる類の本とはかなり趣が異なります。
冒頭、理左衛門が小伝馬町の牢獄に入ったところから、話が始まりますが、実は小伝馬町の牢というのは、世襲でその職に当たる士族の屋敷内にあり、気の毒にもその侍は忌避されていたなどと言う、今まで知らなかった事実に加え、牢屋の構造などまで細かく描かれていて、一気に引き込まれます。
理左衛門の回想から、彼の出自、どうやって江戸の町民のトップ格に上りつめたのか、それがどうして牢に入れられたかを、庶民ゆえに少ない資料を丹念にたどって描いています。続きを読む
kaikoizumi2005 at 23:30|Permalink│Comments(0)│