2012年02月08日

□さよなら、猫よ ありがとう



本が好き!の献本です。

韓国の野良猫報告書と言うブログを活字化したものですが、この本に出会えて良かったと思います。

自宅の近所に出没する野良猫たちの観察&交流記録と言う面持ちで、多数の猫写真と、愛情を持ちながらも冷静な描写が好ましいです。

近年読んだ海外の文章の中でも最も違和感無く読めたのは、翻訳者の腕前の良さかと思いますが、オリジナルの文章もきっとシンプルで素直に訳せるものだったのでは?と自然体の写真を見て想像しました。

よくあるかわいい猫の写真集がタレントの写真集ならば、これは名も無き労働者の日常生活を切り取った写真集に相当するかと思います。

愛らしい表情も有りますが、変顔や生活苦の中にも遊んだり、くつろいだりする日常。時には悲しい死も悲惨過ぎないレベルで写し出されています。

最初は猫を好きでも嫌いでも無かった、いわば中立的だった著書が、家の前で出会った猫の家族が気になり出し、彼らに名前を付けて、写真を撮り始めたという事ですが、もともとが猫大好きでは無かったから、しっかり細部まで観察し、観察する程に愛情が湧き、一方で情に溺れる事無く、抑制の効いた文章が書けたのでしょう。

その文章ですら、時として怒りややりきれなさが滲み出て来る程、韓国では野良猫たちを過激に嫌う人が多く、その暮らしが厳しいという事は初めて知りました。

著書は巻末で日本やスペイン、ギリシャやラオスのように、猫と人が幸せに暮らす世界を作ることは、もしかしたら韓国では実現不可能な望みなのかもしれない、と書いていますが、実は日本の住宅街ではここに描かれたのと大差無いのではないかと思います。

猫が庭にフンをするから迷惑という論はずっと以前から聞きますし、自治体広報などで野良猫の餌付けはやめるようにと書かれているのは何回か見ました。

普段大きなもめ事の無い、我がマンションで猫を巡りいっときかなり揉めた事も思い出しました。猫嫌いな人の主張はこの本で描かれている人たちと大差が有りませんでした。

私自身、子どもの頃から自宅で猫を飼う事はなかったけれど、小さい頃は主のような猫にバカにされたりしながら育って来ました。バカにされた事で憎たらしく思う時期もありましたし、悪さをする猫が嫌いになる事もあったけれど、強い嫌悪感を持つことはなかったので、観察開始以前の著者と通じるところがあったのも、読みやすかった理由として大きいと思います。

著者が国柄と言う激しい野良猫への排斥感情が描かれる一方、飢えている猫たちに知らん顔出来ず餌を与える近所のクリーニング店や屋台、何匹もの猫を抱えてパンクしそうなオジサンなどの猫側に立つ人たち、ブログを読んで寄付をしてくれた支援者たちなどのエピソードも盛り込まれています。

  巻末、当地を去るにあたり、著者は最も力弱い猫の飼い主となる事を選びました。

私自身、行政が推奨する地域猫(野良猫に不妊手術をし、むやみに繁殖さすない、繁殖期の耳障りな鳴き声を防ぎ、地域で見守る)が最も穏当な共存手段だと思っていましたが、著者の観察に寄ると、人為的に淘汰せずとも、少なくとも韓国のある地域では野良猫の生きる環境の厳しさから生存率は著しく低く、個体数が増えすぎる事は無いとの事でした。

猫にとっては、近隣への迷惑防止のために一生屋外に出る事の叶わぬ都市部の飼い猫になったり、追われる事の多い野良猫として猫生を送るより、うちと外を自由に出入りし、ネズミ取りをほめて貰えるような状態が一番の幸せかも?

   読み終えて、八ヶ岳の兄宅に飼われているご長寿ぶち猫と近所の飲食店に捨てられていたというキジトラの二匹がとても幸せに思われました。


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kaikoizumi2005 at 23:35│Comments(0) 生き物、植物系 | フォトエッセイ類

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