2010年12月16日

□史上最悪のクリスマスクッキー交換会



 本が好き!の献本です。

 おなじみの主婦探偵(本人は探偵という意識はなく、善意に基づくちょっぴりのお節介で動き回っ
ているのですが)ルーシーの活躍、今回はクリスマスの時期に起こった殺人事件に関わります。

 このシリーズがコージイミステリーと分類されるのは、スプラッタな場面がないのは勿論ですが、アメリカの善良な市民の日常生活を交えて描かれ、特に子どもたちの成長や主婦としての忙しさ、夫婦の愛情などを丁寧に描いているからだと思われます。この作品を読んでいるとミステリーとして楽しめるのと同時に、日米共通の主婦、母親の悩みに共感出来る一方で、日本とアメリカの慣習の違いを知って新鮮な思いも味わえます。

 殺人事件の発端となったのは、アメリカのクリスマスシーズンの定例イベントらしいクッキー交換会。ひとつの家庭だけではバラティに乏しいクッキーをみんなで持ち寄って交換する事により、より豊かなクリスマスを楽しもうというイベントのようで、アメリカのクリスマスにはクッキーが欠かせないらしいと初めて知りました。

 そして、このパーティ上では日本でも得てしておきがちなお受験母のいさかい(ただし、日本でお受験母が火花を散らすのは中学受験の段階のようです。もっとも最近は小学校受験で火花を散らす方たちもおられるようですね)があったりして、元々クッキー交換会を主催していたルーシーの親友のスーが降りたのも頷ける「この頃メンバーが変わってしまって大変」な事になるのです。

 託児所勤務のスーの職場の新人、感じの良い美人のタッカー、その勤務ぶりで高く評価されていた彼女が無断欠勤し、やがて彼女の他殺体が発見されます。容疑者はタッカーと不倫関係にあったと思われる歯科医。彼の奥さんはクッキー交換会でも、夫に対する愚痴を述べ立てて、場の雰囲気をど〜んと下げた張本人。歯科医と会って人柄を察知したルーシーは彼が犯人である筈がないという予感を抱き、動き始めます。

 一方で、街には新しい警部補が赴任し、前任者の適度にゆるめる方式を変更し、情状酌量なし、貧しい子どもたちが楽しみにしていたクリスマスプレゼントが貰えるイベントを、麻薬撲滅のつまらない絵本を配る会にしてしまったり、おなじみの巡査、カルペッパーも冴えません。

 ルーシーが首を突っ込んで事件が解決に向かって行くパターンはおなじみですが、いつも思うのは、アメリカの主婦の忙しさ。比較的のどかな街に暮らす中流の白人家庭という設定ですが、子ども3人の子育てに格闘し、パートタイムの地域新聞の記者として奮闘し、地域社会のために活動し・・・こういうよきお節介人が、アメリカの良いフレンドリーな雰囲気を醸成するのに大いに寄与しているんだろうなぁと思います。

 そしていつも、いいなぁ〜と思って読むのは、夫婦間の支えあい。ご主人のビルがサラリーマンではないという事もあって、家計はいま一つ不安定。時には味気ない気持ちを味わうこともあるものの、肝心な時には優しく寄り添ってくれるビルの支えがあってのルーシーの活躍なのでしょう。離婚が多いアメリカにあって、この夫婦の支えあいもコージーミステリーの大事な要素のひとつだと思います。

 ちょっとギョッとするのは、恐らくそれがアメリカの現実の姿なのでしょうけれど(というのは、メリルストリープ主演の「恋するベーカリー」でもそういう場面がありましたので)、アメリカでは大麻使用というのは、日本のタバコに毛が生えた程度なのですね。若気の至りでルーシーもビルも大学時代に大麻を吸っていたと描かれ、彼らの長男もイタズラに手を出しています。薬物関係の話も本編の鍵を握る大事な部分なのですが、善良な市民でも、出来心でマリファナに手を出すのが通過儀礼と言うのがアメリカの現状なのですね。一方で、不景気による商業や漁業の苦境も描かれていて、そこは日本の現状と通じるものがありました。

 事件は無事解決され、街には以前の清濁併せ呑む、少しゆるい雰囲気が戻って来そうです。さて、次にはルーシーの前にどんな事件が現れるのでしょうね?

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kaikoizumi2005 at 16:09│Comments(0) 小説・物語 

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