2009年04月05日

【図書券】プリンセス・トヨトミ



 「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」で私にとっては非常に好きな作家になった万城目さんの最新作。
 
 図書館に予約したけれど、待ち人数の多さに、待てない!となりまして、ネットアンケートで溜め込んだ図書券使わなくちゃで自腹です。

 著者が大阪の生まれという事で、大阪に対する愛情がた〜ぷりな作品。

 物語は会計検査院の切れ者、でも、アイスが大好きな松平をボスに、やることなすことドジなのに何故かミラクルを起こす鳥居、そして、パッと見どう見ても白人女性で日本人には見えない旭(と呼ばれるのを彼女は嫌う)ゲーンズブールの3人が登場するところから始まる。

 新幹線の車中で旭と鳥居は凸凹漫才みたいな調子で、鳥居がかつて富士山の麓に見た幻の十字架の話をすると、松平の脳裏にもある似た経験が浮かぶが、それを話すには至らず、大阪府へ検査員として乗り込む。

 京大法学部出身の著者なので、多分、色々なツテから、会計検査院のお仕事ならびに、官庁街における地位(はっきり言ってエリート中のエリートが勤める場所ではないようだ)など、凡民にはワイドショー的に面白く描いてくれている。

 一方の登場人物は空堀商店街の中のお好み焼き屋の息子、いえ、娘になりたい真田大輔とその両親と幼なじみの茶子という活発な少女。

 この全然縁がなさそうな二組が合間見えることになるのには、大阪の男どもが抱える大きな秘密があったというからくりをイキイキと描いた作品であります。

 あまりに壮大なからくりなので「ホントかよ」「ありえない」と突っ込みを入れたくなるのと、「大阪、結局、東京(江戸)に負けてるって自虐ネタじゃん」と言う思いがありますねん。

 壮大稀有な話でありますが、私としては、京都の大学生という分かり易く、それなりに偏狭な場所に限定された話の方がリアリティがありましたね〜。真っ正直に言うと、金原瑞人先生は「最高傑作でしょう」と絶賛されておられますが、私としては、やっぱり「鴨川ホルモー」の目から鱗状態の新鮮さに座布団10枚差し上げます。

 この作品、ひょっとして、大阪に地縁血縁のある方と、そうではない人間とで温度差がかなり違うかも知れませんね〜。

 著者の作品の特徴として「渋い人物」「才色兼備」「ドジだが憎めない」人物が要を握っていると思いますが、今回、渋いは松平(勿論、東京代表っていう感じの姓)彩色兼備は旭、ドジは鳥居(幕末の怪物のもじり?)という感じですかね。ふだんはお好み焼き屋のいたって庶民なおっちゃん真田幸一の変身ぶりはなかなかです。

 それと、前の作品の人・モノがちょろっと出てくるのも特徴で、ホルモーシリーズに登場した料亭が鹿男に出て来て、鹿男で敵役(?)だった南場先生は大阪人として、今回の作品に端役で登場であります。そういうパズルなお楽しみには著者の愛着と共に、読者へのサービス精神を感じました。(^_^)

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kaikoizumi2005 at 21:00│Comments(0) 小説・物語 

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