2008年06月08日

□トウシューズはピンクだけ


トウシューズはピンクだけ
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書評/ミステリ・サスペンス


 本が好き!の献本です。鮮やかなピンク色のバックにピンクのトウシューズという表紙が目を引きます。章ごとのタイトルがルーシーの娘のバレエの発表会の注意事項を書いたピンクの紙の中の1行であり、それが章内で起こる事件と微妙にリンクしているのもなかなかしゃれた趣向です。(^_^)

 私のいつものクセで「借りて期限がある本は気合を入れて読むが、手元に置ける本だとなかなか手をつけない事が多々ある」で、いただいた後、しばらく読んでいなかったのですが、読み始めたら、これが、もう止まりません。

 ミステリーとしては、地味な友達フラニーが少ない賃金で地道に務めていた「法外に高い値段」で売る金物店のけちんぼ店主が、事もあろうにルーシーがフラニーに貸したビデオによって殴り殺され、フラニーが逮捕されてしまうという重要な筋書きと、ルーシーの娘が通うバレエ教室の教師タティアーナの尊敬する師匠、70代になっても背筋が伸びていて素敵だなとルーシーが思うキャロが愛犬を残し、突然蒸発してしまうというもう一つの重要な筋書きがあります。加えて、3児の母であり、今、身重のルーシーの多忙を極める家庭生活を描いていて、飽きさせないです。

 特に主婦としての日常については私も多々心当たりがあり、子どものお稽古事のために翻弄される、いわゆる先進国の子育て現場のややこしさについてため息をつきたくなる部分と、良き主婦ルーシーの用意するアメリカの食卓と一般的に日本で望まれる食事事情に「あら、いいわね、こんなに簡単なご飯でもOKだなんて」と文化の違いを感じたり・・・こういう気付きをもたらしてくれるのも、作者の作品が面白い点かと思います。

 物語の根本にはドメスティックバイオレンスというやりきれない犯罪が横たわっていますが、幸せなはずのルーシーですら、十分に愛情ある夫である夫、ビルの一言に気を遣い、一連の事件を通し、女性の弱さ、しばしば権利を蹂躙されることに対する怒りをあらわにする場面もあり、女性の権利についてはどこの国でもまだまだ十分に守られてはいない事を痛感させられもしました。

 手に汗握る大冒険、ドンパチの威勢のいい追跡劇などはありませんが、細やかな描写や物語の展開の複雑さに引き込まれ、結末には若干の「?」は残るものの、満足出来ました。

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kaikoizumi2005 at 20:00│Comments(0) 小説・物語 

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