2018年01月25日

★しんさいニート

しんさいニート
カトーコーキ
イースト・プレス
2016-09-17



 この本のタイトルは聞いた事あったけれど、読んでみて・・・いろいろ考えさせられました。

 いわゆるヘタウマ絵系なんだけど、ことのほかするっと入って来ましたよ。

 30才で、古家を改造して、陶芸家として生計を立てていた著者を突然襲った3.11.南相馬市在住、シングルの著者は、兄一家と共に福島市のいとこ宅へ避難。

 ご母堂は医療従事者で、被爆をしつつも圏内に残り、原発でお仕事している身内を持つ友人からの「とにかく逃げろ」で兄一家と函館へ移動。

 移動の前には、近所の人や友人たちなど、声かけあって助け合っていたけれど、いち早い判断で地域から逃れた事が、じわじわと彼の心に刺さり・・・被災者として函館市で支援してもらえ、一発奮起して美容師の資格を取る際にも、心の中に被災者であることの負い目を抱え・・・

  しまいには自分なんて不必要な存在だと思うどん底になるわけですが・・・一方で、美容学校の先生や、故郷の同級生などの助けも得られ、ネットでたどりついたカウンセラーの助言を得て、少しずつ這い上がってコミックエッセイを発露とするに至るという運び。

 原発に近い場所に暮らし、幸運にも家族友人の近しい人は失わずに済み、県外脱出も出来たという事は傍目には良かったねなのだけれど、著者にとってはいろいろな自責の念に駆られ、辛い気持ちになって行く・・

 真面目な人であり、自己評価が低く・・・その根底には最期にはいい思い出を共有できた亡き父上の厳しすぎる、モラハラ的なしつけ、それをそのままにした母親への思いなどもあったとカウンセリングを受けていくうちにわかっていく様子が描かれていて、単なる被災ものではない、重層をなしています。

 順調な時には押し込められていた成育歴が、いったん事があった時には助けになるどころか、むしろ精神的どん底へいざなう・・・それがモラハラパワハラな家庭の怖さなのだなと実感。

 読んでいて膝を打ちたくなったのは、カウンセリングの下り。カウンセラーの先生に示された「外的コントロール」の「7つの致命的習慣」というのがあった。

・批判する
・責める
・文句を言う
・ガミガミ言う
・脅す
・罰する
・褒美で釣る

 この7つのうちの多くを繰り出す人は、コントロールしたい人なのだろなと思い、自分の周囲の人を思い浮かべたり、そういうコントロールされて来た結果と思われる委縮している感じを受ける人の事を思ってみた。
 
 一方で「外的コントロール」に相対する「選択理論」というのも述べられていて
・支援する
・傾聴する
・受け入れる
・信頼する
・励ます
・尊敬する
・違いについて交渉する

  の7つだそうで、こちらは人格肯定であり、自己肯定感を得るのに欠かせない要素との事。

 なるほど、自分が好きな人、お付き合いさせていただきたいなと思う人はこちらの要素が濃い人で、嫌だな、遠ざかっていきたいと思うのは前者を連発する人だったので納得。

 そして、もう一つ面白いなと思ったのは、陶芸家をして、過去にはバンドを組んでいた著者、いわばクリエイティブなタイプに最も向かない職業が、事もあろうに著者が選んだ美容師に象徴される美容系や、調理関係なんだそうだ。活躍している方たちはクリエイティブな雰囲気を漂わせているので、てっきり適職と思ったが、実は両方とも徒弟制度の名残がきつく、外的コントロールの温床になっているケースが多々らしい(実際、著者も30歳を越えているにもかかわらず採用してくれた美容院の外的コントロールっぷりに奮闘するもむなしく、なおさら落ち込む原因となる)。

 表現したい人である著者がたどり着いたのが、もともと絵を描くのも好きだった・・・でコミックエッセイである。いきなり出版は難しく、当初腰が引けていたブログでの発表。支持してくれる人も出て、紆余曲折の後、出版に至る・・・という大演壇・・・というめでたしめでたしな終わり方ではになく、どこかに寂しさも漂うけれど、自らに手をかけるかもという最悪の結末にはならず済んで良かった、よかった。

 原発事故の現場に近いところに暮らした人ならではの、報道の虚実などの話もあり、一方で普遍的な心の事も書かれていて、大変面白く読めました。

  額に縦線がいっぱい入っていそうな(→実際は入っていない)くら〜い顔のロン毛の男性の表紙に怯えず、手に取って読む価値あり!

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 一方

kaikoizumi2005 at 13:18│Comments(0) コミック・コミック風エッセイ等 | 人生訓・生き方のヒント等

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