2014年06月06日

□ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子

本が好き!の献本です。

 有名な童話のタイトルをもじって、庶民にとって好ましくない社会事象をかなり辛口で、わかりやすく説明している童話and/or寓話風の作品です。

 だますこと、平気でうそを吐くことを、アサヒると、某大手新聞社をもじったらしい動詞で表現し、様々な「アサヒられ」てしまった事例を物語っています。

 寓話は、独裁制や王政など、庶民の発言が認められない時代に於いて、本音をズバリ言って、首が飛ばぬよう、為政者が「俺のことじゃねぇよな」と笑えるレベルにまで薄めて、描いたものと思われるものが多数あります。

 また、私たちが子どものころに読んだ童話は、残酷さは排除されていたのに、オリジナルはとてつもなくえぐい内容だったというケースもままあります。

 前者の有名どころでは裸の王様を思い出しますが、後者ではヘンゼルとグレーテル、日本のカチカチ山などを思い出します。


 昨今、特定秘密保護法案なるものが通って、これの運用次第では、 言論の自由に大幅制限がかかる懸念もありますが、現状は、言いたい放題が割合と許されている日本なので、この本の著者は、一目でもじりと分かる団体名などあげて、ブラックな寓話を作り上げています。

 ちょっとネット検索をして、著者のプロフィールや発言をチェックしたところ、正義感から書いているのではなくて、世の中、黙って儲けているずるい奴がいる 事を描きたいとありました。

先年亡くなった山崎豊子さんの社会派小説や、元外務省の分析官だった佐藤優さんの小説仕立ての北方領土交渉ストーリーを読んで、これは現実の企業の裏話だなぁとか、これって、あの政治家だよねぇ、などなどと思いつつ、脇役的な存在については、今一つ確信が持てないでいる、その類のイライラをなくすために、一目でそれと分かる名称を使っているそうです。でも、もちろん、フィクションだそうです。

 本作では水俣病から、最近のメタボ基準まで、いろいろな事象をあげていて、特にメタボ事情は、本書を読むころに、ちょうど「検診で健康とみなされた人の平均的数値」が、指標となっているものより高めだった事がニュースで取り上げられたばかりだったので、医療関係者が儲けのために、不健康基準により多く が引っかかるように捜査しているという内容に頷けました。

 精査してではなく、マスコミに接していれば誰でもわかる情報だという書評も読みましたが、しかし、自分の興味にビンゴではない情報だと、本当は知っておくべき話でも、たくさんの情報に埋もれて、ついつい見落としてしまったり、軽くスルーしてしまう私なので、その筋道を拾い上げて、簡単にわかる物語仕立てにしてくれると、なるほどねと改めて思います。

読んでいるうちに、私もひとつ、書きたくなってしまいました。以下、さらなる駄文ですので、お忙しい方はスルーなさってくださいませ。もちろん、フィクションで、日本じゃないどっかの国の話です。

 そう遠くない昔、ひとりの少年がいました。少年のお母さんは、とにかく学校の成績がいいことが一番、将来は立派なお役人になって、安定的生活を送るのが人生最高の幸せと信じていました。なぜならば、自分の父親がお役人をしていて、とても豊かな子ども時代を送れたからでした。少年はお母さんの期待に応え、見事、難関大学へ入学。上級公務員試験を通って、念願のお役人になりました。けれども、今は青年となった男の心には、子ども時代からひとったらしも、国を良くしたいなんて気持ちはありませんでした。まず、大好きなお母さんを喜ばせるため、そして、自分が楽をして、年を取ったら天下りして、その都度退職金をいっぱいもらって、一生楽をして生きていくために上級職の役人になったのです。だから、当然ながら、美味しい話を持ってきてくれるところなら、多少、いやかなり怪しいことがあっても、先延ばし、先延ばしでごまかしてやりました。何しろ、一般ピープルがどうなっても、自分ちさえ良ければ構わないのですから。そして、最後になると、バッサリ切って、悪いのはあいつで自分じゃないと逃げるのが常套手段でした。

けれど、男が中年になるころから、世の中の流れが変わって来ました。一般ピープルが大変な思いをしているのに、お役人が楽をしている、働きに見合わないものを受け取っていると、批判されることが増えました。自分たちは逃げ切りセーフの上役たちは、いろいろな条件を切り下げました。男が、かつて、職場の先輩を見ていて、当然自分も受け取れると思っていた退職金は大幅減額、あちこち転がる程に退職金を手に出来ると思っていたのに、思惑外れで、もうおじいさんと呼ばれても不思議ではない年齢になった男は大好きなお母さんにわびました。僕、思っていた程、出世できないでごめんね。

年取ったお母さんの耳が遠くなっていたので、男の声は大きく、近所にまで聞こえました。隣に長年住んでいた花岡夢造(はなおかむぞう)と花岡ジルのお父さんも役人でしたが、一般ピープルのために親身になって働き、二人がまだ学校に通っている間に死んでしまったのです。「こんな志の低い、仕事しないやつがいるから、まじめなお父さんが過労死しちゃったんだ」「役人全部が悪いわけじゃないのに、こういうやつがいるから、役人全部が悪く言われるようになっちゃったんだ」。二人は密かに、男をかまどに入れて焼いてしまいたい気分になりましたが、グリム童話の世界ではないので、そんな事を出来るはずもありません。しかし、夢造は正義感あふれる警察官になっていたので、政府に不都合な発言は取り締まれる便利な法律のおかげで、男を逮捕することが出来ました。妹のジルは正義感あふれる裁判官になっていたので、重罪判決を出してやりました。公務員だった男が、出世できなかったとか何とか言うなんて、これは国の秘密を漏らしたも同然・・・以前なら無茶苦茶だと通らなかった話も、今はちょっとしたこじつけで通るようになっているのです。めでたくもあり、めでたくもなし。

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kaikoizumi2005 at 22:19│Comments(0) 評論・社会事象評価 

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