2014年06月06日

□日本人はなぜ美しいのか

禅宗寺院の僧侶にして、禅の庭のデザイナーでもある著者は、これまで禅的な生活や考え方のたくさんの著者が有りますが、この本は、日本人の特長である禅的美意識を説いています。

美しい日本をうたいながら、いつか来た道に行きそうな言動ばかりの方もいますので、この本もそういう方にかかれば、日本人の優秀さと、それに引き換え・・・と持って行かれそうですが、著者は他のタイプの美意識を下に見ている訳ではなく、長年培ってきた日本人ならではの美意識を上手に活用しなさいと説いているのだと思います。

既に日本の美は、世界的リーダーには認められているとスティーブ・ジョブスらの例を引いて、述べています。


著者の正確な年齢は存じ上げませんが、禅の庭を見て、その美しさに打たれたと書いておられるので、おそらく、私と同じように、日本的なもののほとんどを古くさいとか悪弊ととらえて捨て去って来た高度経済成長期に子ども時代を過ごされたのではと想像します。

和風建築はカッコ悪い、洋館がステキ、割烹着じゃなくてエプロン、天然素材よりプラスチック、等々。それが日本の国力を押し上げた功績は否めませんが、多くのものが消えたり、影が薄くなりました。

幸いに、若い世代には、捨て去られつつあったものたちの良さを、先入観無しに、新鮮に感じられるようで、絶命寸前だった日本人の美は生き延びられそうです。

若者のあしらい上手を見て、ミーハーなオバサンが、日本的な美しさを再考しているのでは無いかと思う部分もありますが、日本的な美しさと言うのは人生経験 を積み重ね、疲れた心にスッと入り、穏やかな気持ちにさせてくれるから、人は年を取るに連れて和風に心惹かれるようになるのでしょう。

その、スッと入り込み、押し付けがましくなく和ませてくれるのが禅的な美であり、人をもてなす時に発揮されるのが、日本人ならではの良さ、おもてなしの心にも通じるものなのですね。

実は、この本の紹介文を読んだ時に、最初に頭に浮かんだのは採点競技であるフィギュアスケートのことでした。

私の応援している選手に対し、ご本人がどう思っているかは知りませんが、多くのファンが日本の美を感じているのです。

読みながら、その印象に対する裏打ちをしてもらった気持ちになりました。

さりげない、これみよがしではない、たくまない、簡素である、間や余白、己に酔わない、自由な心で生きる、等々を特に第三章で具体的に示しています。その七つの項目のあらかたを満たしているのが、私が応援しているスケーターなのです。

スケート競技が西洋発祥のものゆえに、静かで控えめに感じられる日本的美質が不利になっているのでは?と感じられることもまま有りますが、彼のスケートは エッジの音がほとんど聞こえず、しかも、難しいことを難しくなさそうに演じてしまいます(ガンバリズムが賞賛されるスポーツの世界に於いて、頑張っていなさそうに「見える」のが不利になるのは他競技でも見掛けることですね)。

若い頃は、私もベルサイユ宮殿や、それを模したと言われる迎賓館のロココ風の華麗さに憧れ、地味で目立たないように思えた和風建築の良さが分かりませんでした。

昔の自分ならば、多分、日光東照宮的な分かりやすい、きらびやかさを持つスケーターを応援していると思います。

フィギュアスケートの話ばかりで恐縮ですが、これだけ日本人選手が活躍し、注目されるようになっているので、スケーティングに於ける日本的な美というのも、高く評価されるようになるのではと期待しています。

この本を読んで、さらに日本的な美が好きになりました。ああ、京都に行きたい! 彼のスケーティングを見たい!


なお、日本的な美しさのスケーターが誰かわかった方、コメントいただけたら、ものすごく嬉しいです。正解されても、何もお出し出来ませんが(^^ゞ。



読書blogランキングへ


kaikoizumi2005 at 12:10│Comments(0) 人生訓・生き方のヒント等 | 携帯からの投稿

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
記事検索
オンライン書店なら・・・
Amazonもあるでよ。
紀伊國屋書店オンライン店
ずっと愛用しています。
Archives
最新コメント
甲斐小泉が編集協力しました!
QRコード
QRコード
楽天市場