2014年05月12日

★小説・北方領土交渉 元外務省主任分析官 佐田勇の告白

  鈴木宗男氏と共に逮捕され、外務省のラスプーチンと呼ばれた元外交官、佐藤優氏による小説の形をとった外交秘話。

  正直なところ、小説としてはへたくそだと思います。例えば視点がぐちゃぐちゃだったり、ちょっと戻って読み返さないと混乱するような書き方をしている箇所が気になりました。

 しかし、それでも読まされるのは、ロシア通の外交官としての、一般が知らないような話を臨場感を持って描いているからです。

  いくら著者が、これは事実そのものではないし、現実のだれそれと重ねて読まないようにと前書きで書いていても、ネーミングからして、小泉→鯉隅、東郷→西郷、森→森田、小渕→大渕、などなど、どうしたって、ああ、あの人ねと思わざるを得ないものな上、年月日が添えられれば、これは、機密とはいえないレベルとはいえ、相当な裏話だなと、興味も湧きます。

  さすがに重要機密は書けないであろう分、外務省、外交官の呆れるべき実態が描かれていて、凡庸な頭脳の(いや、アホかも)自分から見たら殿上人状態の外交官に、大変な困ったちゃんが多いとわかり、先恐ろしくなります。

  私自身は、自分の広くはない見聞から、上級職の公務員は、人並みな楽しみを捨てて、学歴をゲットし、難関突破したからには、出世して権利を手にしたり、おいしい思いをしなきゃ損だ、従って、国民の利益より、自分と身内の利益という小粒な人間も多いのではないか、と甚だ危惧しているのですが、残念ながら、それを否定するどころか、裏打ちしてくれるような話が出て来て、自分の主張があながち間違いではないと分かりましたが・・・・この場合、ガッカリです。

  特に外交という国の方向性を考えるにあたり重要な場に、太鼓持ちやら、茶坊主がのさばっていていいのか!

  世の中にはいろいろな立場や見方がありますから、必ずしも著者の述べていることが正しいとは言えない面もあるでしょうけれど、鈴木宗男氏バッシングの頃のテレビ番組のやかましかなど思い出しました。

  バッシングの矢面に立った人間が怪物のように扱われるのには裏がある、ということを改めて思わされました。

  マスコミの情報操作は、特定秘密に関する法整備かがなされようという今、更に激しくなって行くことが考えられます。

  自分の頭で考えないと、かつて、庶民が艱難辛苦の時を過ごした、国民の幸福は二の次、三の次ですらなかった時代が再びやってくると思います。

  のんびり揚げ足取りのスキャンダルを楽しんでいる暇があるなら、自分の意に添うか添わないか、わからないけど、ノンフィクション系のものを見聞きして、いろいろ見方を押さえておいた方が良いと、強く思います。
  

   タイトルには小説とは書いてありますが、この本を小説とカテゴライズするのはやめときます。

kaikoizumi2005 at 16:45│Comments(0) 評論・社会事象評価 

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