2013年11月20日

□世の中それほど不公平じゃない

  恥ずかしながら、子どもの頃から、新聞の人生相談を読むのが好きでありました。ついでに、母がラジオを流している時に聞こえてくる人生相談にも耳を傾けておりました。子供向け雑誌から、ティーンズ向け、大人向けの雑誌まで、人生相談が載っていると、占いより先に目を通しておりました。

 ところが、結婚してからは人生相談欄のない地方紙を購読していたので、日常的に人生相談を目にする機会がなくなり、また、自分が人生相談したい程の悩ましい時期を(今も時々落ち込んではおりますが)過ごした後、美容院や病院の類や、知人、友人宅で手に取る、雑誌、新聞の人生相談を見ると、かつてと随分様相が違っているなぁと思いました。

 偶然にも、この本を読む前に図書館に棚にあった落合恵子さんが、読売新聞紙上で行っていた人生相談をまとめた新書を読んでいたので、なおさらそう思いましたが、かつてのように、断言バリバリ型の回答はほとんど見られないことに気付きました。

 いまどき、断言して、やるな、やれと言うのは、人生相談ではなくて、ちょっと危ない占い師のオバサンだったりします。

 時代が変わり、人の生き方はこうあるべしと断言しなくなっているよです。ひとつには、過去の押し付けがましい回答が嫌われたというのもあるでしょうが(保守的な回答者に多かった既存の道徳、価値観に従うために、結局、相談者ーおもに女性や弱い立場の者が我慢をする方向性に導くもの)、うがった見方をすると、回答者自身が、責任回避のために「答えを出すのはあなたです」と言った感じで断言しないのかも?という感じがしないでもありません。

 しかし、この本の回答は、私が久々にみる、断言型。「そんなのやめちまえ」的な、かなり手厳しい回答も載っています。

 プレイボーイという雑誌は、私の中では「思春期の男の子が隠し持つちょいHな雑誌」のイメージのまんまで来て、まともに手に取って見たことがないので、雑誌での掲載時も、本書のように、若手編集者の太朗氏と浅田次郎氏の掛け合い漫才みたいなスタイルだったのか分かりませんが、太朗氏の読み上げたお悩み相談に対し、次郎氏が突っ込んだり、自らの人生をちょいと覗かせたり、丁々発止のやりとりがとても面白いです。

 もしも、実在の相談者の相談を加工せずにそのまま使っているとしたら、読んだ本人がショックを受ける可能性のあるきっつい言い回しも散見されますが、私には、百戦錬磨のつわものならではの広い見識から、人さまの人生に対して、愛の鞭をくれているように思えます。一見きつそうでも、そこまで言うからには、相手の暮らしぶりや性格を読み取って、こいつにはびしっと言わないと駄目だという中途半端なおためごかしをしない姿勢が感じられます。

 いろいろな経験を重ねて、人間観察眼を磨いて、それを作品に生かしている氏だからこそ、ここまで言っちゃうのだろうと思えます。

 とはいえ、真剣深刻な相談ごとには、絶望するなというあたたかさももちろんあります。びしっ!と来るのは、私から見ても、だらしない!しっかりせい!と言ってしまいたくなるような相談事に対してです。

 時間がなくて、ひとまず流し読みという方は、ひとつひとつの相談ごとに添えられた浅田氏のアイコン付きの白抜き文字の短文を読むだけでも、ためになると思います。ま、中にはかなり下ネタチックな文章もございますが。

 パッと見おちゃらけているようで、浅田さんの芯はすこぶる真剣で、特に家庭、とりわけ妻子を大事にしなくてはという姿勢、そして、人のせいにしないという姿勢は、自身の人生を、人に言われてではなく、自分で考え、主人公として生きている人ならではと思い、感服いたしました。

 特に印象的だったのは、うつ病に悩んでいるという男性に対しての回答。特効薬は奥さんとうまくやることだそうです。自分に近い人から大切にしていくというのが、よい人生を歩むための鉄則です。男ならまずは女房、子供。それができたらひとつ先、親や兄弟を大切にするんだ。で結んでいる項目ですが・・・・これ、だんなに見せたいと思う女性は多いのではないでしょうか?

 実は・・・・連れ合いは浅田氏と中学が同級。自称優等生の夫の眼中になかったかつての同級生の直木賞受賞祝いをしようという往復はがきが届いた時に、大して親しくもなかったのに、そういうときだけ顔を出すのは、という矜持から欠席したのは悪くないと思いますが、浅田さんのご活躍ぶりを見るにつけ「あの時、出席してたら」などと申します。

 この本のタイトル「世の中それほど不公平じゃない」というのは、かつての優等生と、失礼ながら出来ない君の大逆転を象徴しているように思えてなりませんで、もろもろの事をうだうだと考えていたので、書評を書くのがすっかり遅くなりました。

 

kaikoizumi2005 at 17:48│Comments(2) 人生訓・生き方のヒント等 

この記事へのコメント

1. Posted by 東薬師記   2013年12月10日 10:00
3
本の題名がシンプルなんだけど、
どことなく、ぐっとくるわ。
なにかと世間は騒がしいが、
この本の題名を読んだだけ
でも、「そうかも」と思えて
しまうから、不思議だね。
本の題名って(うまくまと
めたつもりか)
2. Posted by 甲斐小泉   2013年12月10日 11:37
東薬師さん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

色々な因縁抜きに(笑)なかなか面白い本でしたよ。
機会がありましたら、お目通しを。

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