2011年05月02日

★千年の色



京都の染師、染司よしおか五代目の著者、生家を継ぐまで大学卒業後、編集、広告の仕事をしていたと言う経歴の方です。

多分回り道をした故に、職人として生きる事にした著者の世界は広がったのではないかと思いますが、草木を使った染色の話、衣にまつわる文化の話、京都の暮らし、お水取りの話、などなど伝統的技術に根ざした話題は、効率と功利優先の現代社会に対する疑問を投げかけていて、先端技術のひとつだった原発の巨大事故に見舞われ、安心安全な暮らしから無理やり切り離された人たちが大勢いる現状と重なります。

京都についても辛口な批評をしている部分が有り、特に建物と街並みの醜さに厳しいですし、売らんかなのために要らぬルールを作って来た挙げ句、衰退して来た着物業界にも手厳しいです。

その一方でよそから見たら同じ京都に見える市内でも、本当の京都と「京都に行く」と言うエリアがある話を始めとして古き京都の食住の話などは面白かったです(毎度おなじみの蛇足ですが、かつて京都の高校に通っていると見なされたのは洛北、鴨沂、紫野、堀川の四校だけだったそうで、道理で鴨沂高校となった府立第一高女に通ったと母の鼻が高かった訳です(笑))。
編集広告と言う流行の最先端を抑えなければいけなかった仕事をした人が古き日本の美しさを訴えていると言う事、考えさせられました。

(※ただし、祇園祭の長刀鉾が女性禁制だったり、相撲の土俵やある種の祭では女性は地味な下請け的な役割をするか見物人になるしかないなど、伝統を守る事が男女共働に逆行する面も有るのが、何とも複雑な気分なんですが…………)


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kaikoizumi2005 at 18:30│Comments(0) 随筆 | 歴史・地域情報

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