2010年07月04日

□タゴガエル鳴く森に出かけよう!



 身の回りの自然豊かな場所にこっそり名前をつけて、嬉々として観察するトモミチ先生。まるで自分のテリトリーで宝探しをしている少年のようであります。


 この本は大人の観察日記という感じで、著者のトモミチ先生が教鞭を取っている大学の学生の協力も得て、地元や旅先の自然の中で虫やタイトルになっているタゴガエルやイモリやサンショウウオ、ドジョウなどを観察したり、家族のリクエストから送った駅で、駅前広場についてホモサピエンスの行動を考察をしたり、色々な「いきもの」の一見不思議に見えたり、逆に当たり前に見える習性を丁寧に観察し、類推しています。

 フツーの人が気付かない地面に開いた小さな穴や、汚いとよけてしまいそうなフンなどの痕跡から、先生や学生さんたちが様々なものを発見する様がイキイキと描かれています。読んでいると、自然観察とは、実に地道な行動である共に、誰でもがその気になって、観察すれば、何の面白みもなさそうに見えた場が、実に魅力的な場所に変身してしまう、すごい魔力のある行為なのだと気付かされます。


 一番印象的なのは、トモミチ先生のいきものに対するフラットな目。通常、生き物ピラミッドでは頂点に立つ人類も、先生の目からはホモサピエンスであり、生きるに適した性質を特化した結果「人間」になったので、別にエライ訳ではないのです。一方で、巷では「虫けらのように」とちっぽけで重んじなくても良いように言われることの多い生き物も、彼らが生きるためにそうなったので、「たかが」でくくられるつまらん存在ではないという見かた。幼い頃、虫愛ずる姫と呼ばれていたらしい私は好きです。

 いきものに対してフラットな見かたをしているけれど、さりとて、よくあるように、たまたまそうなったホモサピエンスの傲岸さを憂い、それ以外の動物に対する仕打ちや、人類の行っている自然破壊を批判する本ではないところも良いですね。目をキラキラさせながら、見落としがちな「不思議」をすくい上げている姿が目に浮かびそうなトモミチ先生の、説教臭0、ちょっとだけ自己陶酔が入って、笑わせてくれる肩のこらない楽しい本です。

 イラストはスタジオ・ジブリでも活躍した百瀬義行さんが担当し、一風変わった宝探しの雰囲気を
盛り上げてくれています。

 この本を読み終えると、身近に自然がある人はそこで、都市部で人の多いところにいる人はそこで、イキモノの観察をしたくなるのではないでしょうか?



※蛇足になりますが、トモミチ先生の独特の文体(こういう風に、カッコの中に説明や個人的思いを追加するスタイル)は好き好きがあるかと思いますが、実は私も似たようなスタイルで文章を書いてしまうので、もしかして、先生もナルニア国ものがたりを子ども時代に読んで瀬田貞二先生の訳に影響を受けてしまったのではないか?などとあらぬ想像をしてしまったのでした。


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kaikoizumi2005 at 15:09│Comments(0)生き物、植物系 | 科学や理科系の話

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