2008年06月10日

□犯罪捜査の心理学


犯罪捜査の心理学
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書評/心理・カウンセリング


 重大な事件が起こるなどつゆ知らず、「本が好き!」で献本を申し込んで、何ともいえないタイミングで当選してしまったものだと本書を読んで思いました。

 犯罪捜査の手法は現場で犯人の遺留品を探したり、コツコツ聞き込みを行うだけではなく、表に出ないところでプロファイリングという心理学の手法で犯人像に迫る方法があると、映画の情報等でうすうす知ってはいましたが、本書では、その細かい部分を語ってくれています。

 先ずは実際に逮捕された、あるいは事件解決時に自殺したり、警察官により射殺されたりした、ある程度の人数の犯人達の犯行から類推して行くのですが、大量殺人、レイプ等の文字が、淡々と並んでいます。

 残念ながらデータに足る程の人数となる犯人像は圧倒的に男性が多く、一方で被害者が女性である場合、男性に対する以上に暴行やレイプが行われており、私も女性なもので、読んでいると、その淡々とした後ろに透けて見える残虐性にゾッとします。

 さりとて、小説や映画のように、犯人のあれこれの事情、被害者のあれこれの事情に深く入り込んで、熱い思いを抱えていたのでは、冷静さを欠き、研究職的なプロファイリング捜査を先に進めることなど出来なくなるので、やむを得ないと頭では分かるのですが、読んでいて、生理的には結構きついものがありました。

 そんな読み心地の悪さを補うコーナーとして、映画マニアであるという著者は犯罪捜査に関わる映画についての解説コーナーを設けてくれていて、ちょっとひと息つけます。(^_^)

 プロファイリングにより、精度的には75パーセント程度まで絞れるところまで来ている犯罪分野もあるようです。例えば、犯人の行動範囲については、自宅界隈から少し離れた場所(土地勘はあるが、近所のよく見知った人に顔を見られる恐れはあまりない)をドーナツ状に取り巻いて行われるタイプと、まるで通勤するが如く、離れた場所のその近辺でかなり頻々と犯罪を行うタイプ等。放火や連続レイプ魔などには多いタイプのようです。勿論、まだ絞りきれない分野もあり、今後更に進化して行く事が求められています。

 一つ印象的で、かつ大事だなと思った事は、何か事件がある毎に犯人の精神疾患を疑う声が出て来て、精神疾患の患者さんに対し、偏見から辛い思いをさせる事が往々にしてあるのに対し、実際は精神疾患のある犯人が被害者殺害などの凶悪な事態に至る事は、むしろ統計的に少ないという事が2度も書いてある事でした。

 犯人の弁護側が減刑を狙って、犯人の精神状態を云々する手法が一般的ですが、一般の人たちに対する精神疾患への偏見を深めている事は否めないようです。今後のプロファイリング捜査の深化により、別の見方をする必要がありそうに思います。

 そして、なんと言っても、不気味だったのは、巻末近くにあった、連続殺人犯の特徴を述べた部分でした。子ども時代は優秀で人望もあった、しかし、挫折を経験している、というあたりは勿論、犯人はインターネット等で犯罪を予告している、というところまでピッタリ合致しているのは気味が悪い程です(いえ、プロファイリングの精度から言ったら当然と著者は言うかも知れませんが)。殆どの項目で、秋葉原事件の犯人が当てはまっています。

 今回、ネット上に犯人は犯罪の予告と進行状況を書き込み続けていたと言います。何とか未然に防げなかったのかと思う一方で、こういう事件が起こると、また一層の締め付けが起こるだろうなぁというイヤな予感もします。

 池田の小学生殺人事件以来、学校のガードがかたくなりました。私自身も近所の学校の変化を間近に見ていますが、門扉が閉められ、カメラが据えられ・・・著者は確かに一般的な犯罪(覗き、窃盗等)には抑止力となるではあろうが、死刑、または射殺を目当ての、いわばゆがんだ自殺願望を抱く場当たり的な殺人犯タイプには全く効き目がなく、地域との交流への妨げになると述べ、むしろ、その費用を地域住民との連携強化やいじめ対策に向けた方が結果的にこの手の犯罪の抑制につながると述べていますが、全く同感です。

 また、犯罪の抑止は一つ間違うと、ある人たちにはレッテル貼りを行ってしまう危険性がある旨も述べられていました。これも大事なことだと思います。(今回のような犯罪が続くと、本当に真摯に厚生をしようとする人たちにとっては不利になりそうで、それも心配です)

 時が時だけに、非常に考えさせられる本でした。プロファイリング捜査が犯人逮捕にさらに力を発揮するように、それ以上に犯罪の抑止につながるようにと念じつつページを閉じました。

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kaikoizumi2005 at 23:39│Comments(0)科学や理科系の話 | 評論・社会事象評価

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